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【5分で分かる】高専生の「キャリア教育」の課題とは?

更新日:2020年10月31日


 

高専出身のキャリ男が高専生のための「キャリア教育」を普及させたい

 

 こんにちは。キャリ男人事サロン代表のキャリ男です。


 今回は、高専生の「キャリア教育」の課題についてキャリ男が考えていることをまとめてみたいと思います。


 というのも、キャリ男自身が高専出身者(5年間の本科及び2年間の専攻科を修了)(筆者プロフィールはこちら)であるため、青春時代を高専に注いだ人間であり、内部事情については知り尽くしている。


 さらには、高専生の「キャリア教育」のあり方へ課題を感じているためである。


 高専への進路を考えている中学生や高専在学生及び保護者、高専出身の方には、ぜひ読み進めていく中で、自身のキャリアを考えるきっかけになって欲しいと思う。


 

高専とは、5年間で技術者を養成する高等教育機関



 皆さんは、高等専門学校(以下、高専)をご存知でしょうか。知らないという方もいるかもしれないので、まずは高専の概略を紹介する。


 高等専門学校について、文部科学省のHPに下記のように記載されている。


 "高等専門学校は実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関です。

 全国に国公私立合わせて57校あり、全体で約6万人の学生が学んでいます。"(文部科学省)


 つまり高専とは、「中学校卒業時に進学する教育機関の選択肢の一つであり、技術者を養成するために設けられた5年間の高等教育期間」と言える。



 また、高専の5年間は本科と呼ばれ、本科を卒業したのち、専攻科入学試験に合格した者は、プラス2年間の専攻科に進学することもできる。

 専攻科を修了した際には、22歳であり学士の学位を得ることができる。


 つまり、大学課程を卒業したことと同程度の評価を得ることが可能となる。さらには、学士を得ることにより、他の大学院(特に国公立大学院)への進学の切符も手にすることができる。


 最近では、5年間の本科を卒業したのちに、他の大学3年次(特に国公立大学)に編入する学生も多くなっている。

 

 高専の5年間をしっかり勉強すれば、就職先にも恵まれ、進学先にも恵まれ、柔軟な

進路(キャリア)選択を手にすることができる夢のような教育機関とも言える。


 詳細は、独立行政法人 国立高等専門学校機構の高専の特色を参照されたい。


 

産業界からの高専出身者の評価は高い



 また、高専出身者は、産業界からも高い評価を受けており、高専生は、下記のような優秀な人が多く見受けられる。

  • 中学時代に優秀であった理系学生が多い(優秀でなければ入学試験に受からない)

  • 専門知識・技能を持つ学生が多い(中学卒業後から、工学系の専門的な実習に慣れている)

  • 報告書のまとめ方・論理的思考が鍛えられている(報告書やレポート、論文の構成やまとめ方に慣れている)

  • 自主性の高い学生が多い(高校生にはない学生としての自主的で責任ある行動が求められる)

  • 社会的に自立している学生が多い(寮生活を送る学生は、集団生活を通して自立意識が芽生えている)

  • 積極的で学習意欲の高い人が多い(ロボットコンテストやプログラミングコンテストに積極的に参加する学生が多い)


 このように、私が高専出身者であるから言うわけではないが、大学の学部生に劣らない非常に優秀な学生が多いように思う。


 卒業後も、産業界で成果を上げて来られた高専出身者の諸先輩の方々の功績の賜物であり、それが受け継がれられている。


 会社や地域など周りに高専生がいる方は、改めて確認してみてほしい。



 

高専生のキャリアの課題とは?



 このように見てくると、「高専生のキャリアの何に課題があるのか」と疑問を持たれるかもしれない。


 現状、高専生の卒業後の進路状況としてもっとも多いのが「企業への就職」である。


 実際に、高専生の就職先の一覧を見ると、大学の学部生が望むような大手企業から引く手数多の求人によってスムーズに就職先が決まっている。


 しかしながら、実際のところ、学生一人一人が自身の将来をしっかり考えた上で企業・就職先選びができているかは甚だ疑問である。


  • 高専の教授や担任がオススメする企業に面接をした所、難なく受かったため就職する

  • 何となく聞いたことがある会社だったので、受けてみたら受かったので、就職する

  • とりあえず受けてみて、どこでもいいから就職する



 実は、このような動機で就職先・キャリアを選択している人が多いのではないだろうか。


 一概に、このような就活のあり方に関して、良い悪いとは言えないかもしれない。


 就職先は、大手企業ばかりであるため、どこに就職しても比較的働きやすい環境が手に入る可能性が高いかもしれない。また、多くの会社の採用試験を受けることが望ましいとも言えない。


 しかしながら、私が考えている課題感としては、その一人一人のキャリア選択に「何かしらの軸はあったのか」、「キャリア教育を受けて判断できているのか」ということである。


 まだ20歳の学生に、明確な軸はなくても良いかもしれないが、「自身の人生の軸」や「将来のキャリア」を考える機会が、高等教育機関としてしっかりと提供されているのかという問題がある。


 つまり、高専生のキャリア教育が十分でないことを課題として考えている(少なくとも私が在籍していた2016年までは無かった)。


 少なくとも、大学課程においては、「キャリアデザイン論」や「キャリア形成論」といった名称の授業が教養科目として開講されていたりもする。

 

 大学生がキャリアに関する基礎知識を知る中で、優秀な高専生が、自身のキャリアの考え方を知らなかったり、キャリアを考える必要性をそもそも知らなかったりするのは、非常にもったいないことではないだろうか。


 私は、高専専攻科修了後、文理統合型を専門分野とする大学院に進学し、幅広い考え方を知ることに恵まれた。


 また、今では人事採用として勤め、キャリアコンサルティングを学ぶなど幅広い視点を得ることに注力してきたため、高専生の「キャリア教育」の課題を感じることができるが、私が受けた高専での「キャリア教育?」のみでは、このような発想にも至らない人材が多いかもしれないことは、近年の働き方の変化を踏まえると早急な改善が求められているのではないだろうか。



 

高専生へのこれからの課題は「キャリア教育」の充実である


ここで、「キャリア教育」の定義を整理してまとめたい。(キャリアの定義はこちらから



「キャリア教育」とは、


"「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」" 

(中央教育審議会答申,2011)



「キャリア発達」とは、


  1. 自分の役割を果たして活動すること、つまり「働くこと」を通して人や社会にかかわることになり、そのかかわり方の違いが「自分らしい生き方」となっていく

  2. 人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割の関係を見出していく連なりや積み重ねが、「キャリア」の意味するところ

  3. 子ども・若者の発達の段階や発達課題の達成と深く関わりながら段階を追って発達していくもの

  4. 社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程を「キャリア発達」という 

(中央教育審議会答申,2011)



 特に、高専生への「キャリア教育」を通して、一人一人が社会的にも、職業的にも自立した状態を目指し、これからの職業人生におけるキャリアの考え方の基盤を身につけて、社会人への一歩を踏み出してほしいように思う。


 

キャリア教育が求められる背景(2004)とは?


 高専生には特に課題感を感じている「キャリア教育」ではあるが、一般的にも「キャリア教育」が求められている背景についてもまとめておく。


  1. 少子・高齢社会の到来、産業・経済の構造的変化、雇用の多様化・流動化

  2. 就職・就業をめぐる環境の変化

  3. 若者の勤労感・職業観、社会人・職業人としての基礎的・基本的な資質をめぐる課題

  4. 精神的・社会的自立が遅れ、人間関係をうまく築くことができない、自分で意思決定ができない、自己肯定感を持てない、将来に希望をもつことができない、進路を選ぼうとしないなど、子どもたちの生活・意識の変容

  5. 高学歴社会におけるモラトリアム傾向が強くなり、進学も就職もしなかったり、進路意識や目的意識が希薄なまま「とりあえず」進学したりする若者の増加


 これらの背景がある中で、一般的にも「キャリア教育」の需要は急速に高まっており、高専生にも求められることは必然である。



 

高専生の「キャリア教育」の拡充を切に願う。


 以上、急速な社会的変化の中で、「キャリア教育」の未整備は、これからを生きる高専生の長期的な活躍にとってリスクになるのではないだろうか。


  • これからは、「就職支援」ではなく「キャリア支援」である。

  • これからは、「職業教育」ではなく、「キャリア教育」である。


 学生自身には、「キャリア教育」の機会が得られないのであれば、主体的にキャリアに関する書籍で幅広い視点を得ることを考えてほしい。


 「キャリア教育」や「キャリア発達」の視野を、高専生一人一人が考えられる仕組みづくり・制度設計を目指していきたい。


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